男の色事には波がある。バイオリズムがある。モテようといくら努力しても、波の谷間にあるあいだは女ができない。反対に波の山にあるときは、向こうから女がやってくる。そういう話は聞かされていたが、青木邦夫は信じなかった。青木は三十六歳の今日まで、いつも谷底にいた。情事の片鱗さえなかった。だが、そんな青木に突然、情事のチャンスがめぐってきたのだ……(「幸運の女たち」)。オフィス・ラブ傑作選。