昔、むかしのそのまた昔。深山の草原に、一本の名もなき草がいた。彼のもとに小生意気な子狐が現れ、「草どん」と呼んでお話をせがむ。山姥に、団子ころころ、お経を読む猫、そして龍の子・小太郎。草どんが語る物語はやがて交錯し、雲上と雲下の世界がひずみ始める。――民話の主人公たちが笑い、苦悩し、闘う。不思議で懐かしいニッポンのファンタジー。〈第十三回中央公論文芸賞受賞〉