その国に物語はなく、一人一人が己に刻み、語るのみだった。しかし、時に、同じ物語が異なる人から語られてしまうことがある。「誤植」を正すために行われるのが「版重ね」。当事者通しが己の物語の正当性を主張する場である。誤りとみなされた者は「焚書」、すなわち、焼かれて殺されるのだ(表題作)。著者の想像力が惜しみなく発揮された7つの物語。