治安維持法事件によって市民はどう裁かれたのか。人の「思い」「信仰」の良し悪しを国が判断し、糾弾し、司法の場で裁く根拠となった治安維持法(1925〜45年)。この法律によって、多くの市民が傷つきおびえ黙らされ天皇の国家に忠誠を誓うよう強制された。特高警察の検挙・取り調べ、思想検察による起訴、裁判所での予審・公判、刑の執行と保護観察・予防拘禁、釈放――それぞれの現場で治安維持法がどう運用されたのかを膨大な資料をもとに明らかにする。