秋も深まった肌寒い日。田村さんは突然帰ってきた。その日から戦後最大の詩人が私の大家さんになった――。パジャマで歩きまわり、こんこん狐に誘われて酒を飲む。戦後最大の詩人、天才と呼ばれた田村隆一の飾り気のない「もうひとつの素顔」をリリカルな筆致で描き出す。1980年田村さんと和子さんと過ごした稲村ヶ崎の日々を、当時の写真とともに編み込んだ密やかな傑作エッセイ。