〈その男〉に出会ったのは、10年ほど前のこと。大学生の私は手痛い失恋を経験し、酒に溺れ、ついには断酒のため地元にある厚生施設に収容されてしまった。小高い山間に作られた施設から、盆地の町並みを見下ろしていた私は、田んぼの中に、大きな男が座っているのを発見した。10キロ以上離れているはずなのに、今自分の手元にはがきを置いたとしたら、そのぐらいのサイズ、つまりそれはものすごく巨大な男だったのだ…。しかし、周囲の誰にも彼の姿は見えないのだという。これはいったいどういうことなのか…。