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2024/02/21
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枕時計の女

著者名: 薄井 ゆうじ
作品詳細

「……かまいません。どうぞ、お持ちになって行ってください」女は決心したようにそう言って、時計と岡崎を見くらべた。「大切にしていた時計なのですが、あなたになら。……似てるんです」「え? 誰が、誰にですか」口に出してから、無粋なことを言ったと、彼は悔やんだ。女はもう、壁の時計のところに立っている。時計の針は全速力でまわっていたが、女がそれを取り上げると、その回転がぴたりととまった。持ち上げたはずみで、ぜんまいが切れたか、歯車でもはずれたのだろう。(「枕時計の女」より) 記憶の時空を越え、出会った男女の淡き交わりを紡ぐ十二の短篇小説を収録。*枕時計の女*鳥を捜す女*卒業しなかった女*蜩になった女*カモシカを追う女*糸桜の女*黒百合を食べた女*浜茶屋に来た女*露天風呂にいた女*喫煙室の女*飛翔する女*地下鉄の女●薄井ゆうじ(うすい・ゆうじ)1949年茨城県生まれ。イラストレーター、デザイン編集会社経営を経て作家へ。1988年『残像少年』で第51回小説現代新人賞を受賞。1991年に初の長篇『天使猫のいる部屋』を発表。1994年『樹の上の草魚』で第15回吉川栄治文学新人賞を受賞。映画化・舞台化・ドラマ化された作品も多い。

出版社:アドレナライズ
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