時は天平宝宇年間。藤原清河の家に仕える高向斐麻呂は14歳で大学寮に入寮した。ひそかに恋心を抱いていた清河の娘・広子のために、唐に渡った清河を迎えに行きたいという思いからだった。大学寮で学ぶのは儒学の基本理念である五常五倫。若者たちは互いに切磋琢磨しながら、将来は己が国を支えてゆくという希望を胸に抱いていた。だがそんな純粋な気持ちを裏切るかのように、政治の流れはうねりを増してゆく。第17回中山義秀文学賞受賞作品。