体が弱く、幼い頃から臥せってばかりいる一(いち)。そんな一を慕う弟の懸次郎は、兄を慰めようと「犬になる」と、申し出る。それから数年、兄弟のごっこ遊びは続いていた。一が父に道ならざる想いを抱いていることも、それを諦めながらも未だ胸に秘めていることも、懸次郎は犬の“わん”として、ずっと見てきた。ただ一の傍にいたくて、一を幸せにしたかったから。だけど──。父に恋する息子。兄に恋する弟。兄と弟のごっこ遊び──。どこかオカシイ、禁断の関係。