もらいっ子の人生は、どこから来て、どこへ、行くのだろうか。渡良瀬川にはじまる血族の、明治、大正、昭和の栄華と斜陽。記憶にない実の父で作家杉山英樹を調べていくと、その青春には壇一雄、小林多喜二、坂口安吾、平野謙、中公編集者らがいました。昭和戦前戦後の文壇史に描かれることのなかった文学者たちとその家族の、生と死と影の真実。理由あって67歳の「私」には戸籍がふたつ、あるのでした。