著者名:
菜波/ルシヴィオ | |
少年の唇が微笑む。そこから覗いた尖った犬歯が鋭利な輝きを放つが、それはすぐに青年の首筋へと埋め込まれた。熱い痛みに青年の表情がしかめられる。だがその次に流れ込んだのは、内側から支配する恍惚だった。理性が、黒い瞳から消えていく。煤色だった左目が黒へと染まった。魔法を消し去る破術の瞳が失われていく。劣情の燃え上がりを消し去ることができないのは、体内に流し込まれたそれが魔法ではないからだ──吸血鬼(ヴァンパイア)の種。人間(ひと)を吸血鬼の贄(にえ)へと変えるための、呪いだ。
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