白い毛並みの猫の耳とふたつに分かれた尻尾を持つ少年の姿をした妖かしは、春海の数える唄声に誘われ深遠の闇での眠りから現し世へと身を起こす。本来ならば妖かしを消滅させる祓師の力を持つ春海であったが、敵意のない白猫の妖かしに力を使うことはなく…愛する者を亡くして孤独となり、失意していた春海の寂しさに、白猫の少年は惹かれる。時折こぼされる「左雨」という名を耳にして、白猫は彼の寂しさに寄り添いながらその名を望んだ。