財産と呼べるものはなにもない若者・斎藤一。住んでいたアパートは家賃滞納で追い出され、なんの当てもなく町をさ迷う。寄る辺ない斉藤が心をよせるのは、誰の目も惹かない、カゲロウやミノムシといった瑣末な虫たち。はかなく短い命しかもたない虫も人も、生きる悲しみに変わりはない……。松本零士が命の残酷さとしたたかさを描く、どこか物悲しい短編集。