港町に暮らす34歳のミホが、九十九さん(なで肩で筋肉がなく七面鳥のように皮膚のたるんだ天然パーマのへなちょこ老人)と同棲するに至るまでの奇妙な顛末。就職の保証人を「いいですよう」とふたつ返事でひき受け、町内会長の葬式で見かけた別居中の妻と愛人から逃げ隠れる九十九さん。ゆったりと走る車からオレンジ色の海を見たり、はんぺんのように軟らかく湿った唇と唇を合わせたり…。「人間と人間関係を描ききった」と絶賛された芥川賞受賞の表題作ほか、二編収録。