著者名:
丘けい子 | |
荒れ果てた下界の岩山。そこに天国のバラを植えれば住む人の心もバラの花のように美しくなると思った天使ニナはひとり花を携えて降りて行く。その姿を、岩山をテリトリーとする魔族のひとりに見とがめられる。魔族の若者はニナを驚かせようと近づくが、ついニナの美しい髪に見とれ手を延ばしてしまう。しかしニナの髪には悪魔の命を奪う力のあるトゲをもつ天国のバラが飾られてあった。ニナが驚き振り向いた瞬間、バラのトゲに刺されて命を落としてしまう若者。ニナは自分のせいで魔族の若者を死なせてしまったこと、そして初めて間近に見る魔族の若者の美しい姿に激しく動揺する。頭によぎるのはどんな命をも甦らせる力があるという天国のバラの露のこと。持ち出し禁止であることを知りながら、ニナはそれを若者に飲ませてしまう。生き返った魔族の若者マルクはニナに、心惹かれた思いを告げる。ニナの心もまたマルクに惹かれていたが、天国そして悪魔の掟はふたりを許さなかった。
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