体がすぐれないのを理由に定廻役を離れる気ままな勤めぶりゆえに“ゆっくり雨太郎”と呼ばれる町方同心・若月雨太郎。道すがら、男にいきなり匕首をふるわれた。なんなくねじ伏せて理由を質してみると、十年前に雨太郎に捕えられ八丈に島流し、そのため言い交わした女は自殺、病身の妹も死ぬのを待つばかりという。さて、どうする、ゆっくりの旦那?(「ふさぎの虫」)江戸の人情と情緒が匂う時代推理連作集。