著者名:
吉本ばなな | |
不安や悲しみではなく、わくわくとドキドキをもって、この船で人生に1回しかないこの1年間を航海しよう2022年12月から2024年3月までのカレンダーと、お守りのような書き下ろしメッセージ60が入った、オールカラーのバナナ・ダイアリー。会話なく食事する無機質なチェーン店を淋しくて嫌いだと思っていたけれど、引きこもりの人がそういうところならやりとりが少ないから行ける、と言っているのを聞いて、そうか、やっぱりこの世にある全ての場所には意味があるんだ、と思う。そんなふうに、自分には意味がなくても人には意味があるものがあること、忘れないでいたい。私が見つめていようといまいと、植物はどんどん育っていく。太陽と光の力で数日の間に高く高く。そのことに深く安らぐ。思い入れなんて意味がないんだと知る。少しだけ様子を見るくらいしか、できることはない。だからありがたい。光が水が風が。ベビーカーが横を通ると、赤ちゃんの顔を見て幸せになる。必ず幸せになるので、ちらっとでも見るようにしている。その瞬間、ベビーカーの後ろにいるお母さんも見ることができない、その小さなかわいさをひとりじめできる。いつかどこかでまた会える、そういうふうに今目の前にいない全員のことを思っておくと、大輪の花のような気持ちにいつでもなれる。
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